『くるみ割り人形』インタビュー | U'beaute – ユーボーテ

連載第2回のテーマは「バレエ」。愛らしくて親しみやすい、バレエデビューにぴったりな公演をご紹介します。劇場の扉を開いて、新たな趣味に出会ってみませんか?

 クリスマスの定番といえば『くるみ割り人形』。幻想的な踊りや心躍るストーリーが印象的な、チャイコフスキー三大バレエの一つです。「花のワルツ」「金平糖の踊り」など、BGMやCMで一度は聞いたことのある有名な曲が散りばめられているので、バレエ初心者の方もきっと鑑賞しやすいはず。

 そんな『くるみ割り人形』を、創立55周年を迎えた「東京バレエ団」がこの冬上演します。今回はマーシャ(クララ)役の秋山 瑛さん、王子役の宮川新大さんにインタビュー。公演の魅力から「立ち居振る舞いを美しく魅せるコツ」まで、たっぷりと伺いました。

1. 主人公と王子の出会いのシーンがロマンチック

――上演は12月。クリスマスの物語を、まさにクリスマスシーズンに楽しめるところも大きな魅力です。お二人にとって『くるみ割り人形』はどのような作品ですか?
秋山 子どもの頃、クリスマスの時期にTVで『くるみ割り人形』が放送されていました。英国ロイヤル・バレエ団の、吉田都さん主演の公演です。母が録画してくれたのですが、とても気に入って何度も見ていて。私にとって、これまでで一番観てきたバレエ作品ですね。DVDも購入して、今もずっと好きです。

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『くるみ割り人形』のポスター

――とても思い入れのある作品なんですね。
秋山 子どもながらにわくわくして、物語の中に入り込むような感覚が味わえました。例えば『白鳥の湖』は別世界のお話という印象なのですが、『くるみ割り人形』は(自分と年齢の近い)女の子のお話。自分に置き換えて楽しむことができました。

――宮川さんはいかがですか?
宮川 人生で初めてコンクールで踊ったヴァリエーション(※ソロで踊る曲のこと)が、『くるみ割り人形』の王子役でした。小学校4年生の時で、残念ながら完成度は全然…でした。あとは、東京バレエ団に入団して1年目に王子役をいただいたのですが、大舞台に慣れない中で緊張もあり、個人的には悔いの残る公演となりました。ちょっと苦い思い出なので、今回の公演でリベンジしたいと思っています。

――「金平糖の精の踊り」をはじめ、さまざまなテイストの踊りがありますが、特にお気に入りの踊りはどれですか?
秋山 くるみ割り人形が王子に変身して、王子が目を覚ますシーンのパ・ド・ドゥ(※男女2人による踊り)がすごく好きです。王子とマーシャが出会うロマンチックな場面で、曲もお気に入り。今回踊れるのがとてもうれしいです。
宮川 僕もそのパ・ド・ドゥが好きですね。王子役の登場シーンであり、一番難しい場面でもあります。

2. 自分なりの役をつくりあげていきたい

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くるみ割り人形

――秋山さんは今年ソリストに昇進されましたが、今回のマーシャ役はご自身にとっても大役なのではないかと思います。その意気込みをお聞かせください。
秋山 東京文化会館のような大きい劇場での主演は初めてなので、まだ実感が湧いていないのが本音です。「マーシャ」と「金平糖の精」はそれぞれまったくキャラクターが違うので、色んな方の『くるみ割り人形』を見たり、新大くんに助けてもらったりしながら、自分なりの役をつくりあげていきたいです。
宮川 東京公演(2019年12月13~15日)では、3日間毎日主演ダンサーが変わり、僕らはその中でも一番若手。瑛ちゃんとは何度かペアで踊ったことがありますが、とても波長が合って踊りやすいです。どこか性格も似ているような気がしますね。全幕で組むのは今回が初めてなので、ゼロからまた創りあげたいです。

――ちなみに、秋山さんはマーシャ役をこれまでに演じられたことはあるのでしょうか?
秋山 初めてです。『くるみ割り人形』の全幕に出演するのはこれが2度目ですね。前回は事前収録の音楽で踊ったこともありますが、今回はオーケストラの生演奏なのでそれも新鮮です。

 ――オーケストラの生演奏では、やはり踊る時の感覚は違うのでしょうか?
秋山 違いますね。
宮川 アンサンブルは“きっかけ”もあるので独特です。そのぶんオーケストラでしか味わえない良さがあるのですが、そこにたどり着くまでのリハーサルは大変ですね。また、主役は(一つの公演で)何度もペアを変えて踊るので、それぞれの相手に合わせたテンポを掴むのも難しいです。

3. “少女”と“お姫様”の演じ分けにも注目

――『くるみ割り人形』のストーリー面でのみどころを教えてください。
秋山 助けた人形が王子様に変わり、最後は主人公がお姫様になって一緒に踊るところです。まさにお伽話、というストーリーですよね。
宮川 アメリカン・ドリーム、いや、ロシアン・ドリームだよね(笑)
秋山 子どもの頃は「こんなことがあったらいいなあ」と憧れていたので、お子様と一緒に観に来ていただいても楽しめると思います。

――では、技術面でのみどころはいかがですか?
宮川 王子役は難しいリフトが多いですね。また、瑛ちゃんの役はとてもハードだと思います。
秋山 見た目は決して派手ではないのですが、とても難しいですね。正統派のクラシック、という感じです。
宮川 演出によっては、子役が「少女(マーシャ)」を踊り、大人のダンサーが「お姫様(金平糖の精)」を踊ることもあるのですが、今回は瑛ちゃんがその両方を演じます。2時間のうちに子どもから大人になって、最後はまた子どもに戻るんです。
秋山 可愛らしい少女から、彼女が憧れている大人のお姫様にガラッと早変わりします。子どもらしさと大人の女性らしさをしっかりと演じ分けたいです。

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――ひとりのダンサーが「少女」と「少女が成長したお姫様の姿」の両方を演じることで、物語に説得力が生まれるんですね。とても楽しみです。また、今回の公演は、37年ぶりに演出がリニューアルされることでも話題です。装置と衣裳はロシアで製作され、演出・振り付けもリニューアルされるそうですね。
宮川 (芸術監督の)斎藤友佳理さんは、“それぞれのダンサーが一番いい見え方をする振り付け”を考えているそうです。主演ダンサーに合わせた振り付けと衣裳が用意される予定なので、どの公演も違う雰囲気になると思います。
秋山 東京公演では毎日主演ダンサーが変わるので、3日間とも衣裳デザインが少しずつ異なる予定です。何度観に来ていただいてもきっとお楽しみいただけると思います。

――お二人のイメージにぴったりの衣裳で登場されるんですね。
秋山 そうですね! 細かい違いかもしれないですが、とても楽しみです。
宮川 自分の衣裳、っていうだけでうれしいですからね。踊っている時も気持ちいいですし。
秋山 各国の踊りの衣裳も、今回すべて一新されると思います。装置では、クリスマスツリーがどのように表現されるのかが楽しみ。今までの『くるみ割り人形』とは異なる演出なので、すでに観たことのある方にも新鮮な気持ちでお楽しみいただけると思います。

4. バレエダンサーが語る“日常で美しく魅せるコツ”

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秋山 瑛さん

――とても優雅で美しいバレエですが、演じるのはとてもハード。バレエダンサーは美しく魅せるプロだと思いますが、日常の中で簡単に取り入れられる”美しく魅せるコツ”があればぜひ教えてください。
秋山 一番日常生活に取り入れやすいのが「姿勢」だと思います。座骨を高くし、胸を開いて肩を落とすときれいに見えますよ。鎖骨のラインが真っ直ぐになるように意識するだけでも、凛とした印象になると思います。
宮川 今は、大人向けのバレエレッスンも色々なところで行われているので、一度ぜひ体験してみてもらいたいですね。ジムに行って鍛えるのもいいですが、美しい体を目指したい場合はバレエがおすすめ。トレーニングでついた筋肉は目立ってしまいがちですが、バレエではきれいにバランス良く筋肉がつきます。
秋山 確かに普段全然使わない筋肉を使いますね。楽しいですし。
宮川 バレエの動きそのものが、私生活にもプラスになると思います。バレエをはじめるきっかけになってくれればうれしいです。

 ――バレエでは全身をバランス良く鍛えることができるんですね。デスクワークが多い方も、正しい姿勢を意識するだけなら真似しやすそうです。

5. “踊っていない時”の演技もぜひ楽しんで

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宮川新大さん

――『くるみ割り人形』はとても親しみやすい演目なので、バレエ初心者の方にもぜひ観ていただきたいと思っています。「ここに注目すればバレエをもっと楽しめる」というポイントがあれば、ぜひ教えてください。
宮川 公演のプログラムを手に入れて、あらすじを読んでから見ていただくのがおすすめです。
秋山 確かに、あらすじを知っていたほうが絶対楽しいと思います。キャラクター同士の関係性も分かりますし。
宮川 ストーリーに付随したダンサーの「マイム」(※演技)がところどころに出てくるので、それも注目していただきたいですね。

――早めに入場して、パンフレットを手に入れてゆっくり過ごすのも素敵ですね。秋山さんは、何か注目してほしいポイントはありますか?
秋山 ダンサーは踊っていないシーンでも演技をしているので、誰か一人“お気に入りのキャラクター”を決めて、目で追いかけてみると面白いと思います。特に最初のクリスマスパーティーのシーンでは、わいわいお話をしていたり、周りにちょっかいを出していたりしている登場人物もいるので、その動きもぜひ楽しんでいただきたいですね。

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6. ~『くるみ割り人形』あらすじ~

クリスマス・イヴの夜、にぎやかなパーティーも終わり、すべてが寝静まった少女マーシャの家の居間。夜の12時をしらせる時計の音とともに、とつぜんクリスマスツリーがぐんぐんと伸びて、マーシャは人形たちのふしぎの世界に迷いこみます。そこではじまったのは、人形の兵隊たちとねずみたちの戦争。勇敢に戦うくるみ割り人形の王子を危機から救ったマーシャは、王子からお礼として、美しい雪の世界や楽しいお菓子の国に招待されるのです。

7. 注目のダンスをピックアップ

■第1幕
マーシャが王子と踊る美しいアダージオ(※ゆったりとした優雅な踊り)と、雪の国で二人が雪片とたわむれるように舞う幻想的なダンスが見どころです。

■第2幕
お菓子の国の宴で、各国の個性的な踊りがくり広げられます。聴いたことのある曲もきっとあるはず。

チョコレートの踊り:フラメンコを彷彿とさせるスペインの踊り

コーヒーの踊り:妖艶なアラビアンダンス

お茶の踊り:チャイナ服を着たお茶の精が登場

トレパック(大麦糖の菓子):コサックダンスを取り入れたロシアの踊り

ミルリトン(葦笛):明るく軽やかなフランスの踊り

花のワルツ:お菓子の国の住人たちがクララを歓迎する踊り

王子と金平糖の精のグラン・パ・ド・ドゥ(※4曲構成のパ・ド・ドゥ):特に金平糖のソロの曲が有名

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