誰もが一度は見たい傑作ミュージカル

 ウォルト・ディズニー・カンパニーによって 1964年に製作され、アカデミー賞5部門を 受賞した不朽の名作映画『メリー・ポピンズ』。ウォルト・ディズニー自らプロデュース し、ミュージカル・アニメーション・実写が一体となった画期的な作品として今も世界中 で愛され続けています。

 

 そして、『ライオン・キング』『アラジン』など数々のディズニーミュージカル を生み出したトーマス・シューマーカーと、『オペラ座の怪人』『CATS』『レ・ミゼラ ブル』といった大人気ミュージカルのプロデューサー、キャメロン・マッキントッシュの 手で2004年にミュージカル化。2018年3~5月には日本人キャストによる初演が行われ、 96回公演の大盛況を収めました。

 

4年ぶりの再演、圧巻の歌唱披露で魅せた製作発表会見

 2022年の春、夢と魔法のミュージカルが再び幕を開けます。再演に先駆けて、2022年1 月26日に製作発表会見が行われました。報道各社がカメラを構える会場内を闇とスモー クが包み込み、ロンドンの街を彷彿とさせる様相に 。――

 

 メリー・ポピンズ役(Wキャスト)の濱田めぐみさんと笹本玲奈さん、煙突掃除屋・バー ト役(Wキャスト)の大貫勇輔さんと小野田龍之介さんによる「チム・チム・チェリー」、 メリー・ポピンズ役の2人が伸びやかな美声を響かせる「何もかもパーフェクト」を披露 しました。

 

 続いて、バードウーマン役(Wキャスト)の島田歌穂さんと鈴木ほのかさんが「鳥に餌 を」をしっとりと歌い上げ、最後にはプリンシパルキャストとアンサンブルキャストの40 名以上による「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」で迫力満点に 歌唱披露を締めくくりました。

 

4年ぶりの再演、圧巻の歌唱披露で魅せた製作発表会見

新旧キャストそれぞれの苦労が垣間見える稽古場エピソード

 主要キャラクターのほとんどがWキャストとなっており、1人は初演から続投、もう1人 は初参加という顔ぶれ。引き続きメリー・ポピンズ役を務める濱田めぐみさんは「4年ぶ りですが自分の中の変化はそれほどなくて、メリーの感覚で物を見られているなと。(W キャストの)笹本玲奈ちゃんはまっさらな状態でお稽古に入ったので、できる限り渡せる ものはなんでも渡したい」とメリー・ポピンズの先輩から後輩への期待を語りました。

 

 これを受けて笹本さんは「右も左も分からない状態で入ってしまったんですけれども。め ぐさんが毎日のようにメリー・ポピンズならではの細かい所作や前回の動きなどの細かい ところまで見てくださっている」と新キャストならではの大変さを吐露。

 

 同じく今回から初参加のバート役・小野田龍之介さんは「この作品は芝居も振付も何もか もが本当に決まりごとが多いんですね。その形式を忠実にやり続けるなかで、稽古をする ごとに俳優の素養がにじみ出てくるところがWキャストの面白さなのかな」とコメント。

 

 バート役の先輩である大貫勇輔さんは「小野田君はロバートソン・アイ役で初演に出てい て、バートのことをよく見ていたって言っていて。だから僕よりもバートの振付を覚えて いるんですよ(笑)。逆に教えてもらう毎日です」と頼もしい相方を称えました。

 

新旧キャストそれぞれの苦労が垣間見える稽古場エピソード

コング桑田さんの悲しい思い出&ブラザートムさんの熱い使命感

 初演から続投でブーム提督&頭取を演じるコング桑田さんからは思いがけないエピソード が飛び出しました。「2018年(初演)の稽古2日目に母親が急に死んじゃいまして。す ぐに大阪へ一週間ぐらい帰って、お葬式を挙げさせてもらってお別れできたんですね。え らいことになってしまったなって 急だったのですごく悲しかったんですけれども。稽…… 古に戻って来て、キャストやスタッフのみんなに支えられて」と当時の状況を懐古。

 

 「歌もダンスも大変でしたが『お客さんようさん来てくれはるし頑張っていこう!』って いう気持ちにもさせてもらえたので、悲しみを乗り越えることができました。この作品に は思い出深いものがあります」と笑顔を浮かべました。

 

 一方、同役で新キャストのブラザートムさんは「(初参加なので)あんまり意見がないで す」とそっけない態度で会場の笑いを誘いつつも、「すごい数のPCR検査をするんですよ ね。それぐらい夢中になって、スタッフも何もかもがこの作品に情熱をかけていることが、 稽古をやり始めて分かるんです。『ああ、これって今届けなきゃいけない作品だ』って」 と心に秘めた熱い思いを語ってくれました。

 

今こそ届けたい心温まるエンターテインメント

 キャスト陣とプロデューサー陣の誰もが口にしたのは、世界中を取り巻く コロナ禍 。濱“” 田さんは「現実では苦しいことや思い通りにならないことがずっと続いていますけれども、 メリーは舞台のなかでこう言います。『どんなことだって起きるわ。その気になれば』。 舞台を観てこのメッセージを持って帰っていただきまして、自分の生活、そして周りの 方々に温かい愛を届けていただければなあと思っております」と日本中のファンへ呼びか けました。

 

 そんな濱田さんには、製作発表会見より以前にオンラインでインタビューを実施。稽古が 始まる前のワクワク感や、初演時の思い出などをたっぷりと伺いました。

 

メリー・ポピンズ役・濱田めぐみさん単独インタビュー

 ――再演のオファーを受けたときはどんなお気持ちでしたか?

 

 初演のときの舞台上の感覚がワーッと全身によみがえってきて、あの世界にもう一度戻れ るんだなぁと、単純にすごく嬉しかったですね。

 

 ――メリー役が決まってからさらに4年が経ったということですか?

観劇後に誰もが魔法にかけられるミュージカル

 ――誰もが耳にしたことのある名曲や、迫力満点のダンス、魔法の世界に入ったかのよう な舞台セットなど、ワクワクする要素がたっぷりと詰まった本作。濱田さんが思う魅力は どんなところにあると思われますか?

 まず、作中で描かれているロンドンの時代背景なのですが、お母さんが子どもを育てると いうよりも、家庭教師や乳母を雇って育ててもらうという、日本にはなじみのない風習が あるんですね。自分の子どもだけれども、自分の思うように育たないから他人に育児を任 せるというのが、当時のロンドンでは普通のライフスタイルだったようです。

 

 他人が家族の中に入って来ることによって生まれる 亀裂 のようなものがあるみたいで。“” そこにメリー・ポピンズという、人間なのか精霊なのか妖精なのか分からない人物が入っ て来て、さまざまな物語を巻き起こすっていう世界観がとてもロマンティックですよね。 魔法を使って、凝り固まった人間の心を解きほぐしていく。そこで生まれてくる心の変化 が、いろいろな人間関係を作っていくんです。

 

 実は、舞台が終わるころには登場人物の全員が成長しているんですよ。お母さんもお父さ んも子どもも。それを観ている観客側も一緒に成長していける。観終わった後に、自分が 成長していることに気が付かないまま観終えることができるんですね。それはつまりメ リーの魔法によって モノの見方が変わっている ということ。“”

 

 実際にお客さんのご家族に対する対応が変わったという声もあって、おはようと言えな かった人が言えるようになったり、ありがとうを言いやすくなっていたりとか。この魔法 にかかることこそ、舞台を観た後のご褒美であり、宝物だと思います。

 

 ――観劇を通して“モノの見方が変わる“というのはとても大きな体験ですね。

 なぜそれが起きるのかというと、メリーの視点から言えば、失うことの恐ろしさをこの舞 台で知るからなんです。その恐ろしさは失ってみなければ分からないじゃないですか。 失って初めて後悔しても遅いということを、舞台を観てお客さんが経験するんです。

 

 失ってしまう恐ろしさを知ったジョージ(バンクス家のお父さん)がいて、お父さんの子 どもの部分、大人の中に閉じ込められた子どもを助けるために、メリーはバンクス家に行 くんだと私は感じ取りました。初演の時は公演期間の後半になると、圧倒的に大人のお客さんが多くなったんです。自分の中にある子どもの部分にメリーが「大丈夫だよ。もう自分を解放しな さい」って語りかけてくれるのが響いているんじゃないでしょうか。

 

 ――大人になってから誰かにそんな風に言ってもらえることなんてないですよね。

 私が一番好きなメリーのセリフが「どんなことでもできる」。大人って諦めるか、妥協す るか、譲るか、誰かのためにするでしょう? それをしなくても、やりたいことやってご らんって言うんですよ。心の中にいる子どもが欲しているものをメリーが提供してくれて いるんじゃないのかな。家族で観に来たんですけど、後日こっそりお父さんひとりで観に 来ましたっていうコメントをいただいたりすると、メリー役としてあぁ良かったなって思 う瞬間もありました。

 

 初演のときの舞台上の感覚がワーッと全身によみがえってきて、あの世界にもう一度戻れ るんだなぁと、単純にすごく嬉しかったですね。

 

メリーという役が自分を選んでくれた

 ――不思議な存在感を放つメリー・ポピンズを演じるのは、とても難しいことだと思いま す。再演するにあたってポイントはありますか?

 メリー像としては、なるべく空気に近い状態で無理せず舞台上にいられるといいなと。メリーっていう役の資質が、私という人間とすごく似ているので、演じているっていう感覚 がないんですよ、私。今までやってきた役はいろいろな仕掛けを作ったり、リサーチした りして役に近づく作業をしてきました。でもメリーに関しては、役が自分を選んでくれたという意識の方が強かったんです。立ち方や首の角度といった細かい演出はつけられます が、内面的なものを近づける必要がない。素のままでいいから、今までの役の中で一番楽ですよ。フラットなまま役に入って、フラットなまま終わっていくみたいな感じだから、心理的な負担は少ないですね。

 

 ――初演時の演出が厳しかったそうですね。

 演目自体もそうですが、メリー役は特に型が決まっているんです。役を演じるのは楽と言いましたが、段取り的なものを体に覚え込ませるのはちょっと時間がかかります。

 

 メリー役について、演出家の方が言っていました。「メリー役の人はグレーの人がいなくて、〇か✕か。できるかできないか。その人をメリーに”していく”っていうことができない」と。なるほどなって思いました。

 

役者とプライベートのスイッチ、幸せを感じる瞬間

 ――立て続けにさまざまな舞台に出演されていますが、役とプライベートを切り替えるス イッチのようなものはありますか?

 無理にゴリッて変わらないんですよね。役に浸っていると、変えたと思っても変わらない。 例えば映画を観た後にすごく感動して大泣きするじゃないですか。舞台が終わった後って その状況と同じなんですよ。それが毎日起こるので、なかなかしんどいですよね。

 

 感動した気持ちって切り替えようと思っても切り替わらない。だから私は、家に帰るまで の車内でクールダウンしています。いつも聴いているモーツァルトの曲を流して、家に帰 るんだよーって体に外的刺激を与えているんです。あとは、家に帰って犬に会うと、ふ わっとほどけるっていうのかな、現実に戻りますね。

 

 ――本作は家族の幸せを見つける物語ですが、濱田さんが日常の中で幸せを感じるのはどんな場面ですが?

 2匹の犬を両脇に抱えて、別途で夜眠りにつくときですね。ああ、今日も一日無事に終わったねって言って眠りにつく瞬間がたまらなく幸せです。ほっとします。

 

大切な方と一緒に『メリー・ポピンズ』の魔法の世界へ

 オーディション当時のエピソードから、メリーの視点から見た作品の見どころまで、たっ ぷりと語っていただきました。そんな濱田さんが主演を務めるミュージカル『メリー・ポ ピンズ』は、2022年3月から東京・東急シアターオーブにて、同年5月からは大阪・梅 田芸術劇場メインホールにて上演されます。家族や友人、恋人など大切な方と一緒に、魔 法の世界へ飛び込んでみてはいかがでしょうか。