宮崎駿による大作漫画『風の谷のナウシカ』全7巻を、昼・夜の通し公演で上演する『新作歌舞伎 風の谷のナウシカ』。宮崎作品の歌舞伎化は初めてのことです。およそ5年前から準備がスタートしているという、ナウシカ役の尾上 菊之助さんにお話を伺いました。
『風の谷のナウシカ』というのは、日本の代表作ともいえるアニメだと思っています。それを歌舞伎にさせていただくにあたって、私もジブリファンの1人として、これをご了承いただいたときには本当にすごく興奮しました。それと同時に、その世界観を大事にしなければいけないという使命と責任感というのも同時に感じています。
2. 宮崎駿監督には、まだお会いできていなくて
鈴木さんを通してお話させていただいているだけなのですが、印象に残っていることは、「『風の谷のナウシカ』という題名さえ変えなければ、どのようにやっていただいてもかまいません」とおっしゃっていただいたこと。それが逆にプレッシャーです（笑）。ゆえに、その世界観を本当に大事にしなくちゃいけないという想いになりましたし、宮崎駿さんが10年以上をかけて書かれた重みを大事にして、1巻から7巻まで通し狂言を作りたいと思いました。
3. テーマ性とスケールの壮大さを含めて歌舞伎にしたい
尾上 菊之助さん
例えば源氏物語なんてそうですけれども、歌舞伎の演目でも、普遍性のあるものが“古典”として残っていくと思うんですよね。このナウシカというのも、普遍性のあるテーマです。あと、なかなか環境問題やエネルギー・資源問題というのは、歌舞伎では扱わないので。そういう意味でも、ナウシカの世界観を歌舞伎としてやってみたい。それから、『仮名手本忠臣蔵』『義経千本桜』などの通し狂言というのは、壮大な話を1日かけてやりますけれども、ナウシカの全7巻というスケールを見たときに、1日の通し公演で、全巻をできるのではという想いがありました。
4. “日本×海外”ではなく“日本×日本”の融合を
「NINAGAWA十二夜」「マハーバーラタ」と、今まで海外の戯曲と日本の歌舞伎を融合してきました。今回2020年オリンピックに向けて、自国の文化を見つめなおす機会だと思うし、海外の方も訪れるから文化を知ってもらえる機会だと思いました。その時に、日本の古典である歌舞伎と、クールジャパンのアニメという、日本×日本の融合で、日本人のみならず海外の方にもアピールできないかなという想いが出てきたのが5年前。海外にもジブリ作品やアニメファンの方がいらっしゃるので、それをきっかけに歌舞伎を知ってもらいたいという想いもありますし、日本の方にも古典を知るきっかけになればいいなと思っています。
5. 劇場に来るだけで楽しめる作品にする自信があります
歌舞伎は敷居が高いと思われがちなのですが、「来てみるとすんなり入れた」といった感想を多くいただきます。より楽しめる方法としては、ストーリーをある程度つかんできていただければ。あとは劇場に来るだけで楽しめる作品にする自信があります。そこまで作り上げたいと思っています。
6. ナウシカ役をやるのはハードルが高いことだと思います
歌舞伎での古典の蓄積が、ナウシカを演じるにあたって大きな手掛かりになる
歌舞伎では、可憐な少女をやるときでも、実年齢の近い役者がやるのと、経験値が高くテクニックやその魅せ方がわかった役者がやるのとでは、両方の面白さがあります。自分がナウシカをやると考えると、16、17歳とかの少女を40歳の大人がやるのでハードルは高いと思うけど、そういう風に魅せ方という経験値が上がってきた分、ナウシカに寄り添えるのではないかと思っています。歌舞伎での古典の蓄積が、ナウシカを演じるにあたって大きな手掛かりになる。ナウシカの成長を感じてもらえるような舞台にしていけたらと思っています。
7. あくまでも古典の技法で
歌舞伎でもいろいろな生き物がでてくるので、その延長線上で王蟲（オウム）も考えています。同様に巨神兵もかなり大きなものになると思うので、劇場に入るか心配しています（笑）。音楽については、代表的な3曲くらいはご了承いただいていて、使いたいと思っています。あとは古典の音楽を、和楽器で編成して作っていただこうと思っています。
8. 古典の力を信じて、新作歌舞伎へ
昼・夜の部で全7巻を通していくということは、通常の新作歌舞伎の1本以上に場面も多く、選択する・考える局面がかなり多いと思うので、出演者の総合力で向かっていかないといけないと思っています。古典で積み上げてきた力を信じて、皆様のお力を借りつつ、古典歌舞伎への敬いと、先人たちへの敬意をこめて、一座一丸となって新作歌舞伎を作り上げていければと思います。
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