芸能の街・赤坂で歌舞伎を―― 3年ぶりに「赤坂大歌舞伎」が帰ってくる! | U'beaute – ユーボーテ

赤坂大歌舞伎として約3年ぶりの公演となる今回の演目は、初代三遊亭圓朝の長編落語を原作とした「怪談 牡丹燈籠」。若侍の萩原新三郎に恋い焦がれて死んだ美貌の娘・お露の幽霊が、死後も牡丹の燈籠燈籠を下げて夜毎新三郎のもとを訪れ、最後はとり殺してしまう。「女は下手に燃え上がらせると恐ろしい」という、怖~いお話。 本公演の制作発表記者会見の模様をお伝えします。

脚本・演出の源孝志さん

 今回脚本・演出を勤めるのは、昨年BSプレミアムドラマ『令和元年版 怪談 牡丹燈籠 Beauty&Fear』(NHK BSプレミアム)を手掛けた源孝志。歌舞伎の脚本・演出はこれが初めてです。

 「僕は3年前の赤坂大歌舞伎を初めて拝見したのですが、違和感なくここまで新しいことをできるんだ、とすごくいい印象だった。(今回の公演にあたっては)こちらのお三方(獅童・勘九郎・七之助)と話をした時に、伝統的な歌舞伎のかっこよさとか、細かい感情表現とかそういうのもちゃんと含まれている牡丹燈籠にしようと。ですので、歌舞伎ファンの方はもちろん、若い演劇ファンの方もたくさん見ていただけるような作品になっていくのではないかと思います」

今の時代の新たな牡丹燈籠になるのでは

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中村獅童さん

 「赤坂大歌舞伎には7年ぶりの出演となる中村獅童。宮辺源次郎と伴蔵の2役を演じます。

 「僕は、赤坂大歌舞伎は7年ぶりの出演となりますが、気心知れた仲間と芝居ができることに今から夢が膨らみます。また、源監督とは2019年に『スローな武士にしてくれ』というドラマでご一緒させていただいて、歌舞伎の演出をしていただけるということで嬉しく思っています。牡丹燈籠は、歌舞伎ファンの方たちの間でも非常に人気の高い演目なのですが、また今の時代の新たな牡丹燈籠になるのではないかという風に思っております」

 自身の役どころについては「ただの放蕩野郎(源次郎)と、ただの小悪党(伴蔵)」と会場の笑いを誘います。

 「人間の欲というのは、皆さんも共感するような部分なのではないかと思いますけど、ただの放蕩です。ただの小悪党です。本当に新しいものを作る時って、稽古場が楽しくて、稽古によってそれぞれのキャラクターが変わることもあるので、あまり決めつけないで、台本を読んで自分なりに工夫してつくっていきたいなと思っています」

ドロドロした愛憎劇のなかに美しさがある舞台に

 萩原新三郎、黒川孝助の2役を演じる勘九郎。

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中村勘九郎さん

 「今回は源監督が加わってくださるというのを楽しみに思いますし、今までの赤坂大歌舞伎とは違った、本当にドロドロした愛憎劇のなかに美しさがある舞台になると思いますので、ぜひ期待していてください」「萩原新三郎はですね、浪人というか、しっかり働いていない。そこに絶世の美女と出会ってしまったがために、運命の歯車が狂って展開していくのですが、お露という女性が惹かれる魅力というか、そういうものを少しでも出せたらいいなと思います。そして、もう1人の孝助。男女の因果因縁、敵討ち、親との関係、師弟の関係も含まれているので、そういうところがどう膨らんでいくかわかりませんけれども、お客様に楽しんでいただけるような役にしていきたいと思います。

こんなに早く決まる新作は、なかなかないのでは

 お露、伴蔵の女房お峰、お国の3役を演じる七之助。

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中村勘九郎さん

 「昨年、私が珍しく映像のお仕事がありまして。それが源監督の脚本と演出の『牡丹燈籠』でした。その台本が届いて目を通した時に『これは今までになく、深いところまで描いている素晴らしい作品だ』と思い、源監督に世間話のような感覚で『これを歌舞伎にしたら面白いですよ』とお話しました。それがこんなにスピーディーに、歌舞伎の新作の演目になるとは。びっくりという反面、このスピーディーさを力として、勢いのある作品を皆で作り上げていきたいと思います」

 本作について、「お国の寂しさだったり、悪女なんですけれども生きるために一生懸命だったり。源次郎と会ってしまったがために単純ではなくなるという、お国の心の揺れが見どころなのではないかと思います。お露は、新三郎という男性に出会ったことによって、人生をそこに賭ける。そして『焦がれ死に』をしてしまって、幽霊にまでなって新三郎に会いに行く。そしてお峰はその2人とはまた別次元で、生きることにとても一生懸命で、欲というか、勢いがあって可愛らしい、ちょっとファニーな感じの女性。三者三様ですべて役が違うので、これは演じ甲斐がありますし、早替りになると思いますので、そういった歌舞伎の手法的なところ、ビジュアル的なところも、楽しんでいただけると思います」

どういう“焦がれ死に”をするのか、お楽しみに

 有名な『お露・新三郎』の怪談話は、圓朝作の『怪談 牡丹燈籠』のごく一部に過ぎません。完全版はお露の父とその忠臣、稀代の悪女とその間男、強欲な町人夫婦。男と女の欲と色が交錯するドロドロの人間ドラマ。

 むしろ最後には「幽霊より人間の方が怖い」と感じさせてしまうあたり、落語というよりは世話物文学の傑作と呼ぶべき名作。全二十二段、20年に渡る長編愛憎劇なのです。

 お露という女性について七之助は「人間としては、怖いですよね。焦がれ死にをするって……それくらいまで人を好きになってしまう。お露は新三郎を求めていて、幽霊になってまで会いに行ったんですけれども、結局新三郎を死に追いやることになってしまう。」

 脚本・演出を担当する源は「すごく有名な古典ですし、やはり皆さんが見たいところはなくさないように。そして今までちょっと眠ったり埋もれたりしていたところは、少し掘り起こして、エッジをかけて。深く人の心に入っていくというよりも、そういうものを見せられてギクッとするような感じの話の筋立てやセリフを書いていきたいと思っています」

 「焦がれ死にってね、誰も見たことないしね。ですから、中村七之助さんの焦がれ死に方を楽しみにしてください、なんてね。」と話し、会場の笑いを誘いました。

若い世代にも親しまれる「赤坂大歌舞伎」

 赤坂大歌舞伎は、十八代目中村勘三郎の「芸能の街・赤坂で歌舞伎を!」という一言で2008年からスタートし、誰にでも親しみやすい演目で幅広く人気を博してきた名物シリーズ。2013年からは中村勘九郎、中村七之助兄弟が亡き父の遺志を継いで公演を続け、さらなる進化を遂げてきました。

 そんな赤坂大歌舞伎にかける想いや、思い出を3人が語りました。

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 「若い世代の方たちに歌舞伎という演劇に馴染んでいただきたい」と話す獅童。 「これから20年後30年後、互いに年を取っていけるような、今の世代の人たちに歌舞伎をもっと見ていただきたいという思いがありますので、そういった部分でも今回も本当にいい作品だと思っております。往年の歌舞伎ファンの皆さん、そして若い世代の新しいお客様。皆さんの目に届くような作品にしたいと思っています」

 「最初に出演させていただいた時に、『この劇場は不思議だな』と思いました」と振り返るのは勘九郎。

 「古典の作品も新しいミュージカルもできる。いろんな可能性を秘めている小屋なんだなと思ったのがTBS赤坂ACTシアターに対する思い出の1つですね。」「この3人だと怖いものなしなので、楽しい芝居ができるんじゃないかなと。新たなページをめくりたいなと思っています」

 「スタッフの方々の熱い想いというのが半端ないですね。なので、今回こんなに早く決まった。やはり僕たちのやりたいという思いだけじゃなくて、スタッフの方々がしっかりしていないと、こういうのって絶対決まらないんですね」と七之助。

 そして、赤坂という街についても「飲食店とかに入っても「今度赤坂大歌舞伎観に行きますよ」って若い人が声をかけてくれる街なんです。そういう街ぐるみで歌舞伎を盛り立てていこうという、すごく居心地のいい、いろんな思いがこもった小屋だと思います」

 男女の愛憎、富を手に入れ狂いだす人生、忠義ゆえに企んだ仇討ち……情事とサスペンスまでもが絡み合う人間の煩悩や本質を、今後の歌舞伎界を担う人気役者たちが競演する、令和版の「怪談 牡丹燈籠」に是非ご期待ください。

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