舞台を観て「人生が変わった」と感じたことはありますか? ダンサー・大貫勇輔さんにとっての「人生を変えてくれた作品」は、ミュージカル『ビリー・エリオット』なのだそう。そんな同作の、3年ぶりとなる日本上演が決定しました。ドラマ「グランメゾン東京」や「ルパンの娘」での演技も印象的だった大貫さんに、同作への熱い想いを伺います。
まず、この作品を初めてロンドンで観た時、衝撃のあまり1幕が終わったあと立てなかったんです。感動しすぎて。日本で上演すると聞いた時は「絶対できないよ。あんなパフォーマンスができる子は絶対にいない」と思いました。ですが、(日本版初演の)製作発表で子どもたちのパフォーマンスがお披露目された時に、ロンドンで観た時と同じような感動があって。それに本当に驚いたし、子どもの可能性を目の当たりにして涙が止まらなかったです。
それ以降も、稽古の中でどんどんレベルアップしていく彼らに、毎日衝撃を受けました。まさに僕の人生を変えてくれた作品ですね。
――大貫さんはご自身のInstagramでも、『ビリー・エリオット』について「僕の人生を変えてくれた作品です」と投稿されていましたね。
ダンスやお芝居への向き合い方を根底から変えてもらった作品なんです。僕は17歳からプロのダンサーとして活動していて、23歳から俳優としての活動も始めました。「歌やお芝居もやってみたいな」と強く感じたきっかけは、23歳の時に出演したミュージカル『ロミオ&ジュリエット』(2011年)。そこからありがたいことに色んな作品に出させていただきました。ですが『ビリー・エリオット』と出会って、これまで無意識のうちに「ダンサー」ということを言い訳にしていたな、と気づかされました。自分では歌もお芝居も努力していたつもりでしたが、少年たちの努力と変化を目の当たりにした時に「俺、真剣にやってなかったかもしれない」と思って。
「長い年月をかけて砂を積み上げる」のがバレエ
――「初演時からここを変えていきたい」という点はありますか?
「こんなに素晴らしい作品はまた上演するに違いない」「再演時も必ず関わりたい」と思っていたので、初演が終わってからもずっとバレエのトレーニングを続けてきました。バレエは形式美的な部分があるので、長い年月をかけて砂を積み上げるように、基礎を積み重ねるしかないんです。今回は初演の時よりも、オールダー・ビリーとして、そしてバレエダンサーとして、より質の良いパフォーマンスをしたいと思っています。
――ちなみに、少年時代のビリーを演じる4人とは、もうお会いしましたか。
いや、まだ会っていないんです。初演時の5人は、性格も得意なこともパフォーマンスの仕方も、一人ひとりまったく違ったので、今回はどんな4人が演じるのか、めちゃくちゃ楽しみです。
ダンスを始めたきっかけは「海」
――バレエに出会い、ダンサーになる夢を抱くビリー。大貫さんは7歳の頃からダンスを始めていらっしゃいますが、「ダンサーになりたい」と最初に思った時のことを教えてください。
7歳の時、海を見ていて「あ、ダンスやろう」と突然思ったんです。母親が元々ダンスの先生で、当時は色んな場所でのレッスンについて回っていて。その日は、レッスン終わりに母親が運転する車に乗って、大磯の海を眺めていました。すると海が僕に「お前はダンスをやれ」と喋りかけてきたんですよ。(笑)それで母親にすぐ「明日から俺ダンスやるわ」と言って。『ビリー・エリオット』でも、父親がビリーの夢を応援していますが、うちの母親もずっと僕を支え続けてくれていますね。
――それまでも、踊ることは元々好きだったんですか?
そうですね。マイケル・ジャクソンが好きで、よく周りの大人たちを呼んでパフォーマンスしていたみたいです(笑)
ドラマ「ルパンの娘」で感じた驚き
――「ルパンの娘」(2019年/フジテレビ系)、「グランメゾン東京」(2019年/TBSテレビ系)など、話題のドラマに次々と出演している大貫さん。俳優業も充実している印象ですが、「映像作品」と「舞台」の演技の違いはどのように実感していますか?
2012年に初めて映像作品に出たのですが、現場では「もっと普通のお芝居を」という注意を受けました。舞台のお芝居って声が大きいし動きが大げさだし、その境目が最初は分からなかったんです。そこから色んなレッスンを受けたりワークショップに行ったりして、映像作品をやる時は「自然なトーン」や「ナチュラルな体の在り方」をすごく意識するようになりました。ですが「ルパンの娘」では歌って踊る妖精みたいなキャラクターで「もっと大げさにやってくれ!」と言われて、「えっ、そんなにやっていいんですか!」と(笑) 自分の良さを引き出していただきましたし、舞台の在り方で出演できた初めてのドラマでしたね。
「グランメゾン東京」では、スパイなのに感動しちゃって
――「グランメゾン東京」(2019年/TBSテレビ系)へのご出演も記憶に新しいです。
「グランメゾン東京」は、自分にとって大きな勝負だった作品です。僕はそれまでの映像作品では、(バレエで培った)「姿勢の良さ」や「所作」を生かした役をいただいていました。「高嶺の花」(2018年/日本テレビ系)では華道の家元役、「やすらぎの刻~道」(2019~20年/テレビ朝日系)では剣道の師範役というように。ですが「グランメゾン東京」でいただいたのは、そういう頼るものの一切ない、純粋なお芝居だけの役どころ。不安や緊張は大きかったですが、お芝居の面白さにさらにハマった瞬間でしたね。舞台は「ステージ全体で魅せるもの」ですが、映像は「カメラで(一部を)切り取るもの」。監督がどういう画を求めているのか、キャッチボールをしてつくりあげるのが面白いなと感じます。
――同作では、木村拓哉さんや鈴木京香さん、歌舞伎役者の尾上菊之助さんなど、さまざまな場所で活躍する方々と共演されていました。その際に感じたことや受けた刺激についても教えてください。
物語の序盤、鈴木京香さんのお芝居で、とても長いセリフがありました。その時僕はスパイとして入っていたんですけど、そのスピーチに感動しちゃいました(笑)
これを観るか観ないかで大きく人生が変わります
――ではそういった映像作品での演技の経験が、舞台での演技に作用してくるのでしょうか?
ものすごく作用しています。今回のオールダー・ビリー役はバレエシーンがメインなのですが、2020年2月からは久しぶりにお芝居がメインの舞台『ねじまき鳥クロニクル』があって。そういった時にドラマでの経験が生きてきますね。ちょっと眉毛が動いたり、一回の瞬きだったり、息を吸ったり……ほんの少しのことで大きな変化が生まれるというか。舞台の世界でも、指の動きや顔の動かし方なども含めて楽しめたらいいなと思っています。
――では最後に、大貫さんがもしご友人や身近な方を『ビリー・エリオット』に誘うとしたら、どのような言葉を使って誘いますか。
人生が変わるから絶対観に来たほうがいい。これを観るか観ないかで大きく人生が変わるよ、って言いますね。本当に、たくさんの人に何度も観てほしいです。
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